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スズキ・ボルティ

スズキのエンジン

概要

スズキ・ボルティは、1990年代に発売された250ccクラスの単気筒ネイキッドバイクです。正確には「Volty(ボルティ)」と表記されることが多く、国内向けにシンプルで落ち着いたスタイリングをコンセプトとして登場しました。

空冷単気筒エンジンを搭載し、クラシカルな丸目ヘッドライトやタンク形状が特徴です。軽量かつ扱いやすい設計で、初心者にも乗りやすいバイクとして企画され、街乗りや通勤・通学用にとくに適しているとされました。
さらに、同系統のエンジンはGN250シリーズなどから受け継いだもので、メンテナンス性も比較的良好といわれています。低燃費性能も期待できたことから、経済的にバイクライフを楽しみたい層を意識して設計されたモデルでもあります。

売れなかった理由

ボルティが市場で苦戦した背景には、数点の要因が挙げられます。

地味な印象

 シンプルなデザインは個性を感じさせるものではなく、当時の若者の間ではレーサーレプリカやアメリカンが人気を博していました。派手さを求めるユーザーには物足りないという印象が強かったのです。
 また、同じくシンプル路線だったヤマハのSRなどと比較すると、ボルティ独自の魅力が十分に伝わりにくい面もありました。

強力な競合モデル

 250ccクラスでは、ホンダのCB250やヤマハのSRV250、カワサキのエストレヤなど、同様にクラシカルなスタイルや初心者向けモデルが複数存在していました。その中でボルティはやや控えめな存在となり、目立ったセールスポイントに欠けていました。
 特にエストレヤなどはレトロな外観が人気を呼び、カスタムパーツが豊富に提供されたため、同系統の「懐かしさ」を求めるユーザーの関心はそちらに流れやすかったといわれています。

ネーミング・プロモーションの不足

 「ボルティ」という名称は日本国内ではほとんど宣伝されず、知名度が低かったことも影響しました。性能面で特に目立った点がなかったこともあり、「安価で乗りやすいバイク」というイメージが浸透せず、販売数が伸び悩みました。
 当時のスズキは大排気量モデルやスクーターのプロモーションに力を入れていた傾向もあり、ボルティへの広告投下が相対的に少なかった面も否めません。

レビュー

実際にボルティに乗ってみると、取り回しのしやすさや教習車的な乗りやすさが印象的です。エンジンパワーは控えめですが、低中速域でのトルクが十分にあり、街乗りでは快適に走行できます。また、車体が軽量なため、信号待ちやUターン時にもストレスが少ないです。

デザインはクラシカルで、丸みを帯びたタンクやシート形状が落ち着いた雰囲気を醸し出しています。ここにカスタムを加えて楽しむユーザーもおり、ハンドルやシートを交換してカフェレーサー風に仕上げるなど、ベース車としてのポテンシャルは決して低くありません。
また、パーツ価格や整備費用も他車種に比べると安価な傾向があり、「コスパの良いセカンドバイク」として楽しむライダーも存在します。

とはいえ、排気音や高速巡行性能にはやや物足りなさを感じる方もいるかもしれません。単気筒エンジンのため、高速道路では振動が増し、スピードも出しづらいです。ゆったりとしたペースでのツーリングには向いているものの、長距離移動やスポーツ走行を求めるライダーには合わない印象があります。
しかし、日常の足や近場での散策用には十分な性能を持ち、メンテナンス性も悪くないため、「大きすぎず、小さすぎず」というニーズにはしっかり応えてくれるバイクだといえます。