概要
カワサキ・KR250は、1980年代に登場した2ストローク並列2気筒のスポーツバイクです。排気量は250ccで、当時のレースシーンで活躍していた「KR」レーサーの血統を感じさせるネーミングが特徴です。レーサーレプリカ人気が高まり始めた時代において、カワサキが送り出した一台として注目されました。
最大の特徴は「タンデムツイン」と呼ばれる独特のエンジンレイアウトです。前後にシリンダーを配置し、クランクシャフトも2本で回転方向を逆にするという、ほかにはない構造を採用していました。この設計により、車体のスリム化や低振動を狙ったものの、量産モデルとしては異例のチャレンジでした。
売れなかった理由
KR250が市場で苦戦した最大の理由は、その特殊なエンジン構造による整備性の悪さや、一般ユーザーには理解しにくいメカニズムにありました。メンテナンスの手間がかかるうえ、故障が起きたときに対応できるショップが限られていたことも、購入のハードルを高くしました。
また、同時期には他メーカーからもレーサーレプリカタイプの250ccモデルが続々と登場し、激しい競争を繰り広げていました。ホンダのNSR250RやヤマハのTZR250、スズキのRG250ガンマなど、名車が並ぶ中で、KR250のタンデムツインはややマニアックな存在となり、ユーザーの興味を引くには至らなかったのです。
加えて、カワサキの中でも「Ninja」シリーズなどの4ストロークスポーツが注目を浴び始めており、2ストモデルに対するユーザーの関心が薄れつつあった時期とも重なりました。
レビュー
実際にKR250に乗ると、低回転域ではやや扱いづらいものの、高回転に入ったときの加速とレスポンスは2ストロークらしい鋭さを感じさせます。車体も比較的軽く、ハンドリングは軽快です。タンデムツインエンジン独特の振動とサウンドは、一部のファンにとっては大きな魅力となります。
しかし、チューニングや整備には専門的な知識が必要で、普通のバイクショップでは敬遠されるケースもあります。現在では希少車扱いで、マニアにはたまらない存在ですが、部品の入手が難しいため維持に苦労することも多いです。
独特のメカニズムやレースシーンを意識した設計は、乗り手を選ぶバイクといえますが、その分ほかにはない体験を提供してくれるモデルでもあります。挑戦的なカワサキのスピリットを感じられる、知る人ぞ知る名車として語り継がれています。