ヤマハ・SDR

ヤマハのバイク

概要

ヤマハ・SDRは、1986年に登場した排気量200ccの2ストロークスポーツバイクです。型式名はSDR200で、見た目の特徴として最も注目されるのはトラス構造のパイプフレームです。細く軽量なボディに、斬新なデザインが与えられたこの車両は、登場当時から話題を集めました。

搭載されているエンジンは、DT200Rと同系統の水冷2ストローク単気筒エンジンで、最高出力34馬力(カタログ値)を発揮します。乾燥重量はわずか105kgと超軽量で、まさに「峠のナイフ」と呼ばれるにふさわしい俊敏なバイクです。

リアモノサスやチャンバー風マフラーなど、ヤマハならではの技術とセンスが光る構成となっており、カタログスペックだけを見れば非常に魅力的な1台といえます。

売れなかった理由

性能やデザインには確かな魅力があったSDRですが、販売面では振るいませんでした。その主な理由は、コンセプトの独自性と市場ニーズとのミスマッチです。

まず、2ストローク200ccという排気量は中途半端で、250ccクラスと比較されやすい存在でした。当時は250ccが軽二輪の主力カテゴリーとして人気を集めており、車検不要の利点や多彩なラインナップが用意されていたため、あえて200ccを選ぶ理由が薄かったのです。

加えて、トラスフレームの個性的なデザインは、バイクファンの中でも好みが分かれる部分でした。特に丸目ヘッドライトとの組み合わせは、現代的というよりもマニアックな印象を与え、一般層には受け入れられにくいものでした。

さらに、価格設定もネックとなりました。車体の軽量化や高剛性な構造を実現するためにコストがかかっていたため、スペックの割に価格が高めとなり、コストパフォーマンスを求めるユーザーから敬遠されてしまいました。

レビュー

ヤマハ・SDRは、乗ってみるとその軽さとキビキビしたハンドリングに驚かされます。105kgという乾燥重量は、現代の原付二種並みでありながら、34馬力というパワーを発揮するため、加速性能やコーナリングは非常に優れています。

ステアリングの応答性は鋭く、街乗りから峠まで楽しめる万能性を持っています。特にワインディングでは、思い通りのラインを描けるため、ベテランライダーにも高い評価を受けています。

一方で、車体が軽すぎるゆえに高速道路では安定性にやや欠け、2ストローク特有の振動や排気音も好みが分かれるポイントです。また、絶版車であるためパーツ供給が難しく、維持にはある程度の知識と覚悟が必要です。

それでも、今なお根強いファンが多く、カスタムベースとして楽しんでいるユーザーも少なくありません。個性を重視するライダーにとって、ヤマハ・SDRは「知る人ぞ知る名車」として愛されています。